要人発言・金融政策

2025年9月FOMC通過後のFRBメンバー発言のポイント解説

要人発言・金融政策

経済・金融ニュースは毎日あふれていますが、「結局どの情報が重要で、なにが相場が動かしているのか」を短時間で把握するのはなかなか大変です。

このブログでは、ブルームバーグやロイターなど信頼できる海外メディアを情報源に、日米を中心に要人発言や経済指標といった重要な経済ニュースをピックアップし、情報を読みやすく再構成してお届けしています。単なるニュースの要約にとどまらず、投資やトレードに活かせるポイントを意識しています。

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・忙しくてニュースをじっくり読む時間がない方
・トレードにファンダメンタルズ分析を取り入れたい方
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今回は、2025年9月22-26日(9月FOMC通過後)のFRBメンバー発言について分かりやすくポイント解説します。

2025年9月22-26日(9月FOMC通過後)のFRBメンバー発言のポイント解説

  • インフレ抑制を最優先する慎重派と労働市場の急速な悪化に対応を求める積極派の二極化が鮮明化
  • トランプ関税は物価上昇要因だが影響は限定的で、一時的との見方が大勢
  • ただし、インフレが持続的な問題に発展するリスクがあるため、警戒を怠るべきではないとの認識
  • 労働市場は「減速しているが大きく崩れていない」との評価が大半だが、今後の対応をめぐり意見が分かれる
  • パウエル議長は、データ次第で柔軟に政策判断を行う姿勢を維持し、事前に決められた道筋はないことを強調

パウエル議長の発言(投票権あり)

政策運営の難しさ

  • インフレのリスクは上振れ方向(物価が想定以上に上がる懸念)
  • 雇用のリスクは下振れ方向(雇用が想定以上に悪化する懸念)
  • どちらのリスクにも対応しなければならず、かじ取りが極めて難しい状況

関税とインフレへの影響

  • トランプ関税が物価を押し上げる要因になっている
  • ただし、消費者への価格転嫁は限定的で、長期的影響は小さい見込み

労働市場の状況

  • 直近3か月の雇用増加は失業率維持の水準を下回っており、雇用の弱さが懸念材料

金融市場への見方

  • 一部の資産価格は歴史的水準と比べて高く、過熱感が見られる

政治的中立性の強調

  • 政治ではなく経済データに基づいて政策を決定している

パウエル議長は、インフレと雇用の双方に対するリスクが存在し、FRBが極めて難しいかじ取りを迫られていることを改めて示しました。

今後の利下げ判断はあらかじめ決められたものではなく、経済データを重視して慎重に進める姿勢を強調しました。

市場に過度な期待や不安を与えないバランスを取った中立的な発言といえます。

出典:
ブルームバーグ:パウエル議長、リスクのない道はないと強調-両面のリスク存在
ロイター:FRB議長、物価と雇用にらみ「難しい局面」 追加緩和時期示さず


ボウマン副議長の発言(投票権あり)

断固たる利下げが必要

  • 労働市場が急速に弱含んでおり、混乱の拡大を防ぐために迅速で断固とした利下げが必要
  • 利下げを遅らせると、あとで大きな利下げをしなければならず、その分だけ経済に大きな負担がかかる恐れがある
  • 最新データに過度に依存すれば対応が後手に回るため、先を見据えた能動的なアプローチが必要

インフレよりも労働市場の弱さに焦点

  • 関税の影響は小さく一時的と評価
  • 関税の影響を除けばインフレ率は2%を大きく上回らない
  • これ以上のインフレ抑制よりも、悪化する労働市場の安定化を優先するべきと主張

バランスシートを縮小を主張

  • 可能な限り小さいバランスシートを維持し、将来の政策対応余地を確保すべき

ボウマン副議長は、労働市場の脆弱化が進む中で政策対応が遅れれば経済に深刻な影響が及ぶとして、迅速かつ断固とした利下げが必要であると強調しました。

インフレ率は目標を上回っているものの、関税の影響は限定的とし、最新データに過度に依存せず先を見据えた政策判断の重要性を指摘しました。

総じて、ボウマン副議長は労働市場の安定を重視し、先手を打つ積極的な政策運営を支持する姿勢を明確にした発言といえます。

出典:
ブルームバーグ:ボウマン副議長、FRBは雇用支援へ断固とした行動を-後手に回る恐れ
ロイター:ボウマンFRB副議長、雇用の悪化に懸念 「断固たる利下げ必要」


ミラン理事の発言(投票権あり)

迅速な利下げの必要性を強調

  • 0.5%ずつ合計2%の利下げが必要
  • 利下げを遅らせると、経済がショックに弱くなり、失業率が大幅に上がる恐れがある

高金利維持の影響に懸念

  • 現在の政策金利(4.00~4.25%)は景気を抑え込む水準であり、経済を過度に冷やしている
  • 中立金利(景気を刺激も抑制もしない金利)は低下しており、それに合わせた政策調整が必要

インフレに対する見方

  • トランプ関税が物価を押し上げる兆候は見られない

ミラン理事は、現在の高金利政策が経済に過度な負担を与えており、迅速かつ大幅な利下げが必要であると強く警告しました。

特に、中立金利の低下に合わせた柔軟な政策調整が行われなければ、失業率の急上昇や景気後退のリスクが高まると指摘しています。

FRB内の他のメンバーが慎重姿勢を維持する中で、即時かつ大規模な利下げを求めるミラン理事の立場は異例であり、経済の下振れリスクへの強い警戒感がにじむ発言となっています。

出典:
ブルームバーグ:マイランFRB理事、迅速な利下げを主張-経済への悪影響を警戒
ロイター:米経済、高金利でぜい弱に 合計2%の利下げ必要=ミランFRB理事


米セントルイス地区連銀のムサレム総裁の発言(投票権あり)

追加利下げの余地は限定的

  • インフレが依然として高止まりしているため、追加利下げの余地は限られている

労働市場を過度に重視しない姿勢

  • 労働市場がさらに悪化した場合には追加利下げを支持する可能性がある
  • ただし、労働市場を重視しすぎると逆に経済に害をもたらす可能性がある

複数の要因がインフレに寄与

  • 関税、労働供給の伸び鈍化など複数の要因がインフレ上振れに影響している
  • 関税の影響はこれまでのところ想定より小さく、2〜3四半期で薄れる見通し
  • 一時的な要因であっても、インフレが持続する脅威には警戒が必要
  • 長期的なインフレ期待を安定させることが非常に重要

ムサレム総裁は、インフレが依然として高止まりしている中で、追加利下げには慎重な姿勢を示しました。

労働市場が大きく悪化しない限り、利下げの余地は限られており、インフレ抑制を優先する姿勢を明確にしました。

総じて、データ重視で会合ごとに慎重に判断していくという、ややタカ派寄りのスタンスを示した発言といえます。

出典:
ブルームバーグ:セントルイス連銀総裁、追加利下げ余地は限定的-インフレ警戒
ロイター:米追加利下げ余地「限定的」、インフレ高止まりで=セントルイス連銀総裁


米シカゴ連銀のグールズビー総裁の発言(投票権あり)

追加利下げには慎重な姿勢

  • インフレ率がFRBの目標(2%)を4年半も上回り、さらに上昇している現状を懸念
  • この状況では「前倒しで過度な利下げ」をすべきではない

インフレの動向に対する警戒

  • トランプ政権の関税は懸念されたほどインフレを押し上げていない
  • インフレが持続するかどうかまだ不透明であるため、警戒を怠るべきではない

雇用は安定的と評価

  • シカゴ連銀の分析では、採用ペースは鈍化しているが解雇は低水準にとどまっており、雇用は安定的に維持されている

グールズビー総裁は、インフレ率が目標を上回り続ける現状では、前倒しで積極的な利下げを行うべきではないとの慎重な姿勢を示しました。

一方で、雇用の安定とインフレの目標回帰が確認されれば、段階的な利下げを進める柔軟性も示しました。

関税の影響が限定的であることを踏まえつつ、経済指標を見極めながら、過剰な利下げによる政策ミスを避ける姿勢を強調した発言といえます。

出典:
ブルームバーグ:シカゴ連銀総裁、「過度に積極的な利下げは避けるべき」-物価を警戒
ロイター:過度の追加緩和前倒しは間違い、インフレ動向見極め前に=シカゴ連銀総裁


米カンザスシティー連銀のシュミッド総裁の発言(投票権あり)

追加利下げの必要性は限定的

  • インフレは依然として高水準であり、現時点で急いで追加利下げを行う必要はない
  • 労働市場は減速しているものの、現状はおおむね均衡が取れていると評価

金融政策スタンスは適切な水準

  • 現行の金利は「わずかに景気抑制的」だが、適切な位置にある
  • インフレや雇用の指標を注視しながら、物価安定と雇用最大化の両立を目指す

シュミッド総裁は、労働市場の弱まりリスクを認めつつも、インフレが依然として高止まりしているため、追加利下げを急ぐべきではないとの慎重な姿勢を示しました。

前回の小幅な利下げはリスクバランスを取る上で妥当な対応とし、今後はインフレと雇用のデータを重視しながら、景気と物価の安定を両立させるための慎重で柔軟な政策運営を進める方針を明確にしました。

出典:
ブルームバーグ:カンザスシティー連銀総裁、追加利下げに慎重-現行政策「適切」
ロイター:利下げは合理的な雇用市場のリスク管理=米カンザスシティー連銀総裁


米クリーブランド連銀のハマック総裁の発言(投票権なし)

利下げに慎重な姿勢

  • 景気過熱を避けるため、金融引き締めの解除(利下げ)は極めて慎重であるべき
  • 早期に利下げを行えば再び景気が過熱し、インフレが加速する恐れがあると警戒

インフレへの強い警戒

  • インフレ率がFRBの目標(2%)を依然として上回っており、4年以上にわたり高止まりしている
  • インフレ率は今後数年は目標の2%に戻らない可能性がある

労働市場は堅調と評価

  • 雇用増加は鈍化しているが、依然として堅調な労働市場と評価
  • 今年は若干失業率が上振れする可能性はあるが、再び低下に向かう見通し

ハマック総裁は、インフレ率が依然としてFRBの2%目標を大きく上回っている現状を踏まえ、金融政策の引き締め解除に非常に慎重な姿勢を示しました。

労働市場は雇用増加がやや鈍化しつつも依然として堅調であると評価し、景気過熱の再燃を防ぐためにも利下げは時期尚早であると強調しました。

総じて、ハマック総裁はインフレ抑制を最優先し、政策の方向転換には慎重さを欠かさないタカ派寄りの立場を示した発言といえます。

出典:
ブルームバーグ:クリーブランド連銀総裁、利下げに慎重姿勢-インフレを引き続き注視
ロイター:FRBは「利下げに慎重に」、インフレ懸念で=クリーブランド連銀総裁


米アトランタ連銀のボスティック総裁の発言(投票権なし)

追加利下げは現時点で不要との見方

  • 年内に追加利下げを行う必要はない
  • インフレが依然として高止まりしており、金利を動かす時期ではない

インフレ懸念を強調

  • インフレリスクが経済に残っており、物価上昇には引き続き警戒が必要
  • インフレ率がFRBの目標(2%)に戻るのは2028年以降と予想
  • トランプ関税はインフレを押し上げる要因の1つだが、影響は想定より小さい

雇用リスクも無視できない

  • 雇用リスクも高まっており、インフレリスクと同様に注意が必要
  • 政策判断にはインフレと雇用の両面を見極めるバランス感覚が求められる

ボスティック総裁は、足元のインフレが依然として高止まりしている状況を踏まえ、年内の追加利下げは不要であるとの立場を明確にしました。

関税の影響は想定よりも小さいとしつつも、インフレが目標水準に戻るのは2028年以降との見通しを示し、引き続き物価動向に警戒が必要であると強調しました。

また、雇用リスクも無視できない状況にあり、インフレ抑制と雇用維持の両面に配慮した慎重な政策運営の重要性を指摘し、経済全体のバランスを意識した対応を求める発言といえます。

出典:
ブルームバーグ:ボスティック総裁、今後もインフレ圧力が続く-FOMCは引き続き警戒を
ロイター:FRB追加利下げは年内不要、インフレ懸念で─アトランタ連銀総裁=米紙
ロイター:米経済になおインフレリスク、関税の影響は「限定的」=アトランタ連銀総裁


米リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言(投票権なし)

インフレと失業率の悪化リスクは限定的

  • インフレと失業率はいずれもFRBの目標から外れているが、双方が急速に悪化するリスクは限定的

雇用と消費の安定が焦点

  • 企業や消費者の不透明感は和らぎ、活動は通常の状態に戻りつつある
  • 多数の失業がなければ消費は持ちこたえるが、雇用の悪化が進めば消費も鈍化する可能性を指摘

政策判断はデータ次第

  • 今後の経済データを見極めながら政策スタンスを調整する必要がある
  • 追加利下げを行うかどうかも、あらかじめ決めずデータに基づいて判断する

バーキン総裁は、インフレと失業率の両方がFRBの目標から外れている現状を認めつつも、急速な悪化リスクは限定的であるとの見方を示しました。

企業や消費者の活動が通常に戻りつつある中で、消費の持続には雇用の安定が重要であり、失業率が大きく悪化しない限り経済は持ちこたえると指摘しました。

また、追加利下げの判断は今後のデータ次第であり、政策運営は柔軟に対応していく姿勢を示した発言といえます。

出典:
ブルームバーグ:リッチモンド連銀総裁、失業とインフレへのリスクいずれも限定的
ロイター:米消費者支出は堅調、失業増加なければ=リッチモンド連銀総裁


米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁の発言(投票権なし)

追加利下げの可能性に言及

  • 今後も経済状況によっては一段の利下げが必要になる可能性が高い
  • ただし、時期や規模については断言できないと慎重な姿勢

インフレは目標に近づきつつある

  • 関税の影響を除いたインフレ率は2.4~2.5%程度で、依然高いが2%目標に近づいている

労働市場は持続可能だが慎重な対応が必要

  • 雇用は減速しているが、弱いわけではなく持続可能な水準にあると評価
  • ただし、これ以上の鈍化は望ましくなく、労働市場を下支えする政策が必要

デーリー総裁は、先週の利下げを全面的に支持し、経済の減速リスクに備える「保険」の役割があったと説明しました。

景気後退やスタグフレーションを否定しつつも、インフレが目標に近づきつつある中で、今後も状況次第では追加利下げが必要になる可能性があると発言しました。

景気や雇用の安定を重視し、必要に応じて利下げを視野に入れる柔軟な姿勢を示した、ハト派寄りの発言といえます。

出典:
ロイター:米SF連銀総裁、先週の利下げ「全面支持」 追加緩和必要の公算


FRBメンバー発言の全体総括

インフレと雇用のリスクをめぐる二極化

今回の発言では、インフレの持続的な高止まりへの警戒と、労働市場の悪化への対応という2つのテーマが明確に分かれました。

パウエル議長を含め複数のFRBメンバーが、インフレ抑制を最優先し、利下げには慎重なスタンスを維持しました。

一方、ボウマン副議長・ミラン理事は労働市場の急速な悪化に強い警戒を示し、迅速かつ積極的な利下げを求める姿勢を鮮明にしました。

インフレと関税の影響について

多くのメンバーが、トランプ政権の関税が物価上昇要因ではあるが影響は限定的であると指摘しています。

インフレ率は依然として2%を上回るが、関税による物価押し上げは一時的との見方が大勢です。

ただし、インフレが持続的な問題に発展するリスクがあるため、警戒を怠るべきではないとの認識も示されています。

労働市場の評価

労働市場は「減速しているが大きく崩れてはいない」という認識が大半ですが、対応のあり方についてはさまざまな主張が見受けられます。

デーリー総裁は、現状はまだ持ちこたえているが、これ以上の鈍化は避けたいとし、雇用支援の必要性を指摘しています。

ボウマン副議長とミラン理事は、雇用悪化が進めば対応が遅れるリスクがあるとして先手を打った行動を主張しています。


今回は、2025年9月22-26日(9月FOMC通過後)のFRBメンバー発言について分かりやすくポイント解説します。について分かりやすくポイント解説しました。今後も重要な発言や経済指標などを分かりやすく整理してお伝えしていきます。






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